くじら12号

 奈良県御所市櫛羅(ならけん ごせし くじら)にある酒蔵、千代酒造さんの「春の利き酒会」に行ってきた。
 千代酒造さんと言えば、『篠峯』『櫛羅』といった銘柄が有名である。
 今回の利き酒会では、参加費1000円で、オリジナルグラスをもらえて、45種類の日本酒をきき酒することができた。すんごいお得!

 2部制になっており、僕は1部に参加。
 1部は朝の9時から開始ということで、寝起きの1杯が日本酒という、日本酒作家としてこれほど嬉しい内容はない。

 橿原市にある自宅から、最寄りの御所駅まで電車を乗り継ぎ40分ほど。そこから徒歩20分でようやく千代酒造さんにたどり着いた。

 とりあえず、僕は1番から順に利いていくことにした。

 おいしい。おいしい。おいしい。
 普段からよく飲んでいる『篠峯』だけど、銘柄の違い、お米の違いで味わいが全然違う。

ある老夫婦との会話


 利きながら、1つずつメモをしていると、老夫婦に声をかけられた。
「これと、これ、どっちがおいしいですか?」
 老夫婦が指したお酒はお米違いで、1つは愛山。1つは山田錦を使っている。
「僕は、こっち(山田錦)の方が、お米の香りにクセがなくて、好きですよ」
 というような内容を話した。

 僕は、やわらぎ水を飲みながら、全種類を利き酒することができたのだけど、老夫婦にしてみれば、体力的に全てを飲むことができないから、僕に感想を求め、選んで飲まれていた。
 すべてを利き酒できる体力があることは、幸せなことだと感じた。そして僕の感想を信用してくれたことが嬉しかった。

 利き酒って、こういうことだよな。

 僕の持論なのだけど、知識はひけらかさないようにしている。
 楽しみを奪うことは、悲しみを与えることと似ているから。

 老夫婦が僕にくれた信用は、日本酒に携わっていく上で、基本にしてなによりも大切なことではないだろうか。
 あの日の老夫婦さん。ありがとうございます。


 個人的な好みなのだけど、値段との兼ね合い(コスパ)で、この日飲んだ45種類の中のベストは……『篠峯 ろくまる 雄山錦 純米吟醸 直汲無濾過生酒』『篠峯 純米 山田錦 超辛無濾過生酒』に決定!

 ていねいな説明つきの蔵見学をさせてもらって、普段飲むことのできない『もろみ』をいただき、酒粕の掴み取りをして、充実の内容だった。

 これだけの内容で1000円とは、なんか申し訳ないような気もしたので、せっかくなので、味噌を購入。「SAKE BAR 和~かず~」では、こちらの味噌を使った料理を提供しよう。

 朝から45種類の日本酒を飲み、炎天下の中を往復で40分歩いたので、帰りの電車では熟睡。
 降りなければならない駅から7駅分乗り過ごしたことは言うまでもない。

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