マズくなる日本酒

 これは友人が体験したお話。

 日本酒好きの友人は、いつものように近所の酒屋さんに立ち寄り、ある日本酒を購入。
 その銘柄は人気が高く、初めて飲むのを楽しみにしていた。
 帰宅しすぐに飲んでみると、口内を襲う強烈な刺激に、思わず吐き出してしまったそうだ。
 友人は思った。「この日本酒は、こんなにマズいのか」と。

 その話を聞いた僕は、「酸が強いものなら、そういう日本酒もあるのかな、飲んだことはないけど」と予想しながら、友人を連れて高島屋へ向かった。
 ちょうど『日本酒祭』という日本酒の催事をしていて、全国の日本酒を試飲できたからだ。

『日本酒祭』の様子はこちら→「百貨店ラブストーリー」

 先に挙げた日本酒を見つけたので、僕たちは恐る恐る試飲する。
 飲んだ瞬間、友人も僕も、同じ感想を口にした。
「めっちゃおいしい!」 
 しかも、酸が強いどころか、なんともまろやか系のおいしいお酒。これは人気が高いのも頷ける。

なぜ最初に飲んだ日本酒はマズかったのか?

 自分の間違いかもしれないと、友人は家に帰りもう一度、飲んでみた。
 また吐き出してしまったそうだ。

 原因は、『生酒』を常温の場所で放置していたからではないかと予想すると、確かに酒屋さんの常温の場所に置いてあったと言う。
 友人は、購入した酒屋さんに電話をして、事の成り行きを話した。

 酒屋さんも、友人の電話内容を理解して、謝罪してきたという。
 酒屋さんが言うには、その店の構造上、店の奥に位置する冷蔵庫では目立たなく、あまり売れなかったので、店内に入ってすぐの目立つ常温の場所に置いていたそうだ。

謝って済む問題か

 その酒屋さんの謝罪方法は、友人の家に、きちんと品質管理をした同じお酒を届けるというもの。もちろん、しっかりと頭を下げるのだろうけど。
 この謝罪を受け入れて、穏便に済ませるという人が多いかもしれない。僕ならそうしていたかもしれない。

 しかし友人が賢かったのは、ここからである。
 酒屋さんに、こう告げたという。

「謝って済む問題ではないと思います。あなた方は商品が『売れない』というだけで、品質管理を怠った。僕も、百貨店で試飲していなければ、一生このお酒はマズい銘柄だと思っていただろうし、一生買わなかっただろう。それが原因で日本酒を嫌いになるお客さんもいるかもしれない。さらに、信頼して販売を任せた蔵元さんにも迷惑が掛かる。謝罪で終わらせるのではなく、これからは、そういった日本酒を愛している人たちのことをよく考えていただきたい。僕は、あなた方のお店で、お酒を買うことは金輪際ありません」

 酒屋さんとして、あってはならないことだと思う。
 例外として、あえて『生酒』を常温で置いて熟成させている酒屋さんもある。

 なぜ、その場所に置いているのか?
 その理由を考えてみると、違いは明らかだ。

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