第36回全国きき酒選手権大会 奈良県予選


 『第36回全国きき酒選手権大会 奈良県予選』に、初参戦してきた。

 こちらの大会は、酒類製造、卸、小売関係者は参加できない。
 つまり、お酒のプロではなく、「一般消費者」が対象となる。

 「日本酒作家」と名乗っているが、製造や卸、小売はしていないので、僕も一般消費者である。
 それにしても、やはり、こんな肩書きを持つ者として、負けるわけにはいかない。

 全国には、素晴らしいテイスティング能力をもった人が、たくさんいることは知っている。
 しかしながら、僕は自分のテイスティング能力に絶対的な自信をもっている。

 僕の目指すところは日本一なんかじゃない。世界一だ!
 世界一になる者として、予選で負けるなんてことは、絶対に有り得ない。
 本戦の決勝大会であっても、僕にとっては、単なる通過点でしかないのである。

ルール

 今回は、7点マッチング方式が採用されていた。
 奈良県でつくられた7種類(イロハニホヘト)の日本酒を利いていく。
 制限時間は7分間。つまり、単純計算で1種類1分間。

 その後、1分間のインターバルが置かれる。この1分間で、まとめ、次の準備に入る。

 また同じ7種類(ABCDEFG)を7分間できき酒し、先ほど行ったものと、どれが一緒なのかをマッチング。解答していく。

 大吟醸酒もあれば、普通酒もあるのだが、ある意味相反するこれらでさえも、大きな違いは見られなかった。
 よく言われる「大吟醸は華やかな香りで~」とか、そんな特徴だけでは、なかなか判断しにくいものが揃えられていたように思う。

 もう一度言うが、僕は「日本酒作家」である。世界一を目指している男だ。
 僅かな違いであっても、その本質を捉え、きき酒していった。

 解答を終え、皆は落胆した表情をされている。
「全然わからんかった~」
 そんな言葉が口々に発せられる。
 なるほど。確かに難しかった。
 自信をもてない気持ちもわかる。また来年がんばっていただきたいものだ。

 そんな中で、ただ1人、僕は自信満々の表情を浮かべていた。
 楽勝だ。
 上位2位までが、東京で行われる決勝大会に出場できるのだけど、僕の本戦出場は、決まっているようなものである。

 もし、上位で同点が3人以上出た場合などはプレーオフをして、上位2名を決める。
 つまり、僕は満点なのだろうけれど、同じように満点の人が2人以上いた場合、プレーオフで戦わなければならない。

 プレーオフになったとて、負けなければいいだけの話。
 余裕をもって、大会とは別に用意された、29種類の試飲をして、結果を待っていた。

 少しくらい酔ったところで、優勝するのだから、待ち時間を有効活用して、有意義に過ごすことにした。

プレーオフ

 結果発表の前に、プレーオフ開催のアナウンスが入った。
 上位2名を決めることが目的なので、プレーオフと言っても、優勝決定戦というわけではない。
 たとえば、優勝は決まっていても、2位が複数人いた場合は、その人たちがプレーオフを受けることになる。

 このとき、優勝決定戦なのか、2位決定戦なのかは定かにされない。
 プレーオフには7人が選ばれた。
 僕は、ここには選ばれなかった。なるほど優勝は僕で、2位決定戦のプレーオフをしているのか。
 まぁ、せいぜいがんばりたまえ。

運命の結果発表

 プレーオフも終わり、上位2名が決まった。

 優勝は……

「満点の成績をおさめました……〇〇さん! おめでとうございます!」

 あれ? 空耳(アワー)か?

 「日本酒作家 栗本和紀さん」とは違う名前が呼ばれたような……
 そもそも、女性の名前だったぞ?

 大きな拍手とともに、1人の女性が前に出られる。
 あれ? 僕じゃないの?

 続けて、2位も発表された。
 こちらも、どう考えても、「栗本和紀」とは違う名前が呼ばれた。そもそも僕はプレーオフを受けていない。

 いやはや。
 上位にもカスってないやーん!
 ズコーっ!!!

 誰だ? 斜め45度の横顔を見せながら「単なる通過点にしかすぎない」とかなんとか言っていたのは?

 誰だ? ジャケットの襟元を片方引っ張りながら「日本一じゃない。世界一になるんだ」とかなんとか言っていたのは?

 誰だ? カメラ目線でウインクしながら「日本酒作家です。余裕で優勝します」とかなんとか言っていたのは?

 全然あかんやないかー!
 ズコーっ!!!

 せめて上位に食い込めやーい!
 ズコーっ!!!

 教訓。
「どうせコケるなら、派手にコケたほうが気持ちがいい」

 参加されたみなさん、おつかれさまでした。
 上位2名に選ばれた人たちは、決勝大会もがんばってくださいね。陰ながら応援しています。

 僕は、ズルズルに負けまくりましたが、とても楽しい大会でした。
 携わられた方々、ありがとうございました。
 また来年がんばります!

 日本酒作家、堕落なり。

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